シードル造りに挑戦!
「シードル(cidre)」とは、りんごの発泡酒のこと。
そば粉のクレープ、「ガレット(galette)」とともに楽しむイメージが強いため、
お隣にあるブルターニュ地方のシードルの方が
日本では知られているかもしれません。
しかし、ノルマンディー地方もりんごの産地であるため、
シードルは立派な特産物のひとつです。
我が家にもりんごの果樹園があることは、すでにお話しした通り。
ただし、生食用とシードル用ではりんごの品種が異なるため、
生食用のりんごのみを栽培している我が家では、
今までシードル造りとはご縁がありませんでした。
シードル用のりんごの木があるのは、
牧草地の向こうにあるファンファンの実家の敷地。
以前はファンファンのお父さんが、
他人にりんごを提供する代わりに造ってもらったシードルを、
手に入れていたよう。
2015年にファンファンのお父さんが亡くなり、
そのシードル用のりんごは地面に落ちるがままになっていたのです。
その敷地を受け継いだファンファン、
りんごを腐るままにしておくはずがありません。
こうして2016年11月、りんごの収穫時期に、
いざ、シードル造りに挑戦することに相成ったのです。
生食用のりんごとは異なり、シードル用のりんごは酸味が強く、
そのまま食べても美味しくないとか。
また、ドリンクにしてしまうため、
生食用のように木に登って1個ずつ手でもぎ取る必要もありません。
そこで借りて来たのが、掃除機のようなりんごの採集機。
地面に転がすだけで、落ちたりんごを集めてくれるのです。
こうして集めたりんごは、
昔ならば巨大な石臼で馬が引いて粉砕していたよう。
今でもノルマンディーの昔の家の片隅に、
シードル造りの名残があるのが見られます。
しかし、我が家に馬はいても、
残念ながら石臼はありませんので現代的に行うことに。
現代では業者さんに頼むと、
すべての作業をこなしてくれる専用車でやって来てくれます。
りんごを洗う、粉砕する、圧搾する。
圧縮する前に細かくなったりんごの果実を平らにし、
漉し布に包むのは手作業ですが、
慣れた手つきで段取りよく、あっという間にりんごの果汁が出来上がり!
果汁はホースを伝ってタンクへと運ばれて行きます。
山のようにあったりんごが、
約半日ですべて果汁になってしまうという早さ!
果汁を絞るまでは早かったのですが、
ここからが時間がかかるところ。
りんごの果汁がおいしく醸造するのを待たなくてはいけません。
とはいえ、添加するものは何もありません。
私たちは何もすることはなく、果汁自身が発酵するのを待つのみです。
時々、比重計でチェックすること、約3カ月。
瓶詰めをする時の比重値によって好みの味に仕上げることができるようですが、
比重計の使い方には理想は1015~1020と書かれています。
翌年2月に比重値が1015になったため、瓶詰め作業を実施です。
瓶詰めをする時に、糖分を少々追加。
さらに本格的にするならば、コルク栓を使用すべきなのでしょうが、
私たちはプラスチック栓に針金を巻いて閉栓。
この後は、カーブに寝かしておきながら、
時々瓶を開けて味見をし、飲み頃を見ていきます。
そして、その年の夏はシードル三昧となりました!
自家製シードルのお味はというと、
りんご味がしっかり楽しめるとともにナチュラルでほどよい発泡。
まさに芳醇な味わいです!
知人の中には「こんなに美味しいシードルは初めて」と絶賛する人もいるほど。
市販のものばかり食べていると、
自然の味が分からなくなるものですが、
手作りのものを食して初めて、
いかに市販品には雑味が多いことか分かります。
日が長くなり、夏の気持ちいい屋外で食べる夜ごはんで
楽しむ手作りシードルは、さらに格別な味わい。
ノルマンディー産のりんごを、
いつもとは異なる方法で存分に堪能しました!