ムールの夏!フリットの夏!
こんなにもムール貝を食べた夏は初めてでした。
(といいつつ、写真を撮っている暇がなく、写真は昔レストランで食べたもの)
日本ではカラス貝などど呼ばれ、いまいち馴染みのない貝ですが、
フランスでは非常によく食べられるのがこのムール貝(moule)。
そのポピュラーさ加減といえば、
日本でいうカレーやラーメンなどに値するほどで、
いわばフランスの国民食といった感じ。
パリならベルギーからのチェーン店でいつでも食べられるし、
海辺の町に行けば、
外に置かれた黒板に誇らしげに書かれているビストロメニューのひとつ。
でも、おいしいムール貝を食べようと思ったら、
おいしい季節を待たなくてはいけません。
ムール貝の旬はだんぜん夏!
したがって、ムール大好き男のFanFanは、
いつも夏前になるとそわそわ。
魚屋でムール貝の出来栄えを聞きに行っては、
「まだ身が大きくならないって」
「出来栄えはいまいちみたい」と残念そうに手ぶらで帰ってくる。
でも、今年は違いました!
7月中旬にスーパーの魚屋さんで“特価”で売られている、
“かなりよさげな”ムール貝を買ってきたのを皮切りに、
その翌日もお客さんが来るっていうんで、
じゃあ“昨日安くておいしかった”ムール貝を再び買いにスーパーへ。
残念ながら値段は一晩で2倍も値上がりしていて、
渋い顔をしながらも今年のムール貝デビューに歯止めがかからず、
やっぱり大量に買ってきたFanFan。
ちょっとぐらい高いからって何ですか、
連日だからって何ですか、
ムール貝のおいしい季節の到来です!
それからお客さんがうちに来るたびに、
この夏のうちのメニューは“ムール&フリット(moules&frites)”。
フリットといえば、こちらもフランスの国民食である、
フライドポテトの“ポム・フリット(pommes frites)”のこと。
フランスではビストロ料理の付け合せには欠かせず、
何でもかんでもフリットがついてくるのがお決まり。
でもムール貝といえば、
“ムール&フリット”しか考えられないくらいの黄金コンビ。
一度、さやいんげんがうちに大量にあったため、
捌くべくその日のお客さんたちに“ムール&いんげん(moules&haricots)”を出したら、
「ムール&アリコは初めて食べたけど、悪くないわね」とは言ってくれたものの、
みんな何か物足りない顔をしているのは見え見え。
私自身だって“ムール&アリコ”では何だかしっくりこなくて、
やっぱり“ムール&フリット”にすればよかったと後悔したもの。
何がそんなに合うのかというと、
ムール貝のソースにフリットをつけて食べる人もいるけれど、
私はなんといっても歯ごたえの相性だと思うな。
やわらかいムール貝にカリッと揚がったフリットを合いの手に食べると、
不思議不思議とバケツ1杯、ムール貝が食べられちゃう(by FanFan)!
同じポテトだからと、
ベイクドポテトやマッシュポテトとともにムール貝を想像してみると、
やわやわコンビでちっとも惹かれない。
それとも、どこもかしこも“ムール&フリット”一色だから、
頭に“ムール”とインプットされると“フリット”に変換されるように、
洗脳されているのかも。
とにもかくにも、両方とも作るのはものすごく簡単だから、
料理担当の身としても大助かり。
みじん切りの玉ねぎとつぶしたにんにくをオリーブ油で炒めたら、
洗ったムール貝を加えてざっくり炒め合わせ、白ワインを振って蓋をし、
ムール貝の殻が開くまで蒸すだけ(moules marinière)!
何にでもクリームを入れると言われるノルマンディーでは、
ソースに生クリームを入れてクリーム風味にするのが一般的ながら、
私は白ワインだけでさっぱりと仕上げる方が多いな。
後はお好みでシブレットとかパセリとか香草を入れてもイケル。
フリットはご存じ、拍子木切りに切ったら揚げ油で揚げるだけ!
さすがに8人分ともなると、ムール貝は大鍋で2回戦に挑むしかないけれど、
ムール貝そのものの味だけで味付けなんて必要ないし、
なんといってもフランス人の国民食ですから、みんなニッコニコ。
もう、何人でもお客さん、いらっしゃ~い!!てな感じ。
でも、私の一番の醍醐味と言ったら、
翌日に残ったムール貝とソースにパスタを絡めて食べること!
こちらはノルマンディー風にクリームを入れても、ああうまい!!
名付けて“ムール貝のボンゴレ・ノルマン”って言うの(伊仏語混合)?
パスタといったら、
バターかクリームを絡めることしか知らないノルマン人たちに言うと、
「へぇ~」と目からウロコみたいな顔をされる。
ま、ムールといえばフリットしか頭にない人々には、
かなり上級編ではありますけれどね(おほほほほほ)。
そのためにも、少量のムール貝とソースを残すことは、
必ず死守しますとも!!
9月に入っても珍しく夏日が続いていたある日、
この夏、十ウン回目(?)の“ムール&フリット”のお客様は、
南仏男のアランでした。
いつものごとく、1人前バケツ一杯のムール貝を平らげ、
山盛りのフリットに手を伸ばしながら、
おしゃべりも休むことのないフランス男2人。
「このムール貝もおいしいけれど、
自分で獲ってきたムール貝の味は比べものにならないよ」
今や南仏男を気取っているけれど、元々はノルマン人であるアランが力説。
実はフランスでもっともムール貝の生産が多いノルマンディー。
なんとうちの近くにアサリならぬ、
ムール貝の潮干狩りができる場所があると言うのです!!!
ちなみにムール貝にも、
養殖ものと天然ものの2種類があります。
養殖ものの中でもbouchotと呼ばれるのが、
砂に打ち込んだ杭で養殖されるやり方で、
モン・サン・ミシェル湾産が有名。
身がオレンジがかっていて小粒で、
ビストロでよく見かけるのがこちら。
天然ものは身が白っぽくて大きく、
貝の中に小さな蟹がもれなくオマケでついてくる。
色の違いは海に潜ったままでなかなか日の光を浴びないため、
天然ものは色が白いままとのこと。
いつもFanFanが市場で買ってくるのは天然もので、
チビ蟹を吐き出しながら食べなくてはいけないのだけれど、
そのやわらかく肉厚な身はやっぱり美味。
それよりもうまいという潮干狩りもの、気になるでしょ!
翌日も恐ろしいほどの快晴で、つかの間の残暑気分。
でも夏の終わりは確実に秒読みだから、焦る、焦る。
こうなったら今日行くしかない!
と、意気揚々、ムール貝の潮干狩りに繰り出したのです。
by yokosakamaki
| 2013-10-15 06:12
| 夏のこと