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ノルマンディーの風

生なる春

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            暖かな春らしい日が訪れたかのも一瞬のこと、
            嵐のような日々が続くフランス。
            ノルマンディーでも巨大な雲たちが、
            群れをなす宇宙船のごとく、次から次へと現れては
            空を一定方向に向かって超高速で走っていく。

            真っ黒な雲が大粒の雨を叩きつけたかと思うと、
            その雲が通りすぎるのを待っていられないとばかりに、
            太陽の光が射し込む。
            仕舞いにはお互いの出番を譲り合う余裕もなくなり、
            時折、さあっと太陽に照らされながら、
            雨たちが真昼に降る流星のように幾重にも、
            細い金色の線を描いて落ちてくる。

            ようやく開き始めたさくらんぼの花びらは咲いた途端、
            横殴りの風と雨の暴力によってあっという間に、
            水平に飛ばされていってしまう。

            
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            そうだよな。
            毎年、春が確実にやってくる保障なんて、
            なにもないのだもの。


            ここ近年のフランスの話をすれば、
            春を告げるはずのイースターの時期は常に天気は悪く。
            今年は特に例年よりも寒い感じで、
            春用の革のジャケットを着始めたものの、
            冬用のコートにすればよかったと後悔することもしばしば。
            冷たい風が吹き付ける時は、毛糸の帽子が欲しくなるほどで、
            もう5月になるというのに周りの人々もまだまだ冬の装い。


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            とはいえ、この春の嵐が終われば、
            基本的にはお天気が続くはずながら、
            待ってました!とデカイ顔で現れる、
            太陽の威力も一気に強烈に。
            その日差しはすでに夏のような強さのものになるだろう。

            となると、結局のところ、
            うららかな春の日はいったい、どこへ行ってしまったことやら。
            例年通りとなると、5、6月が夏のような暑さに気温が一気に上り、
            そして7月には早々と秋の気配が漂い始め、
            そのまま長い、長い冬へと突入~というあらすじ書きになる。


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            そんな不安定な気候を、もろに影響として受けるのは、
            もちろん植物たち。
            花が咲く頃に寒い日が続くと、もちろん花が咲いてくれず、
            果物たちの実りにも響いてくる。
            去年中庭に植えた桜の木は無事に満開になってくれたけれど、
            ミモザの木は私が喜び勇んで撮影していた“霜”にやられ、
            すっかり茶色に干からび、花を咲かせたのは足元の数本の枝のみ。

            中庭の芝生はさまざまなところから飛んできた野の花たちが、
            さあ!と一気に咲き始め、猫たちにとってジャングルと化した頃、
            FanFanの芝刈り機によって一気に刈り込まれ、
            人為的に一瞬の春で終わってしまった植物たちもいる。


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            何が起こるか分からない状況にあるのは、
            動物たちも同じこと。
            鳥小屋へ引越しを済ませた小にわとり30羽は、
            すでに2羽が死んでいるのを発見。

            5つの卵が入っているのを見つけた木の上の野鳥の巣は、
            次の週にヒナが見られるかと、見学に行ったらまんまと空っぽ。
            はては、うちの猫どもが食べちまったのか?

            そんな殺生事となるとうちの中庭では、春とは言わず日常茶飯事。
            何やらを口にくわえて来ては、むしゃむしゃ食べている猫や、
            平らげるのならまだしも、
            弄ばれたまま打ち捨てられたネズミの死骸が転がっているのは普通のこと。

            半野生であるうちの猫たち自身だって、
            1匹や2匹、いなくなってもおかしくはなかったのだから、
            明日はわが身ということだって大いにあり得る。


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            次の春は来るのか、どころか、
            明日はどうなることすらわからない自然界。
            だからこそ、個々がその瞬間、その瞬間を、
            必死に生きていくことができるのだろう。

            「自分探しの旅」や「引きこもり」になっている暇など、
            彼らにはまったくない。
            この不安定な気候の中でさえも、
            そんな個体、個体が自分のやるべきことを着実に成してくれるからこそ、
            “春”と言うものが、この地上に訪れてくれるのだろう。


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            本来は人間だって同じ立場のはず。
            いつ何時、事故に遭うのか、病気になるのか、
            そして大災害が襲ってくるのか分からない身。
            “生と死”という、自然サイクルの一部でしかない
            私たちにとってできることといえば、
            植物や動物と同様に、
            “生”をつないでいくことだけなのだと思う。




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            春の嵐の隙間を狙って散歩に出た果樹園は、
            去年と同じ、緑の草地にはタンポポが散りばめられ、
            さくらんぼとりんごの木には花が開き始めている。

            そして今、私の傍では、
            タンポポと果樹の花々が咲く、まさに同じような風景の中で、
            去年生まれた子猫たちが一緒に歩いている。

            気温は少し低いけれど、
            周りには自然界すべてでもたらしてくれた、
            “生なる春”が溢れている。
            今年もみんなで一緒に、この季節を迎えられたことに、
            心から感謝します!!
            
                       
            
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            と、そこに乱入して来たのは、うちの犬、アカント。
            いや、決してあなたを忘れていたわけではないんだけどね。

            追い返すわけにもいかず、
            仕方がないので今度はアカントと一緒に散歩を続行。
            もしかしたら子猫たちは中庭に逃げ帰るかしら?という不安はよそに、
            少し間隔を置いて、3匹ともついて来た、ついて来た!

            なんだみんな、やればできるじゃん!!

            初の“犬&猫合同散歩”と無理やりなったわけだけど、
            まあ、ともかく、今日は会いたい馬がいるのです。

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            今や、最大限にお腹が膨らんだ、牝馬のセリア。
            左側が右よりも尖った形になっていて、
            そこにはたぶん足があるのかも、と私は勝手に想像。

            そうです!
            今年は子馬が見られそうですよ!!!
         
            
            
               
            
            
            
by yokosakamaki | 2012-04-29 20:49 | 春のこと