モネの世界
私のノルマンディーの印象は“潤い”。
フランスの北部にあるため、ほどよく冷気があり、
南の地方よりも空気にどことなく湿り気がある感じ。
緑も豊かで牧草地や麦畑などの緑はもちろんのこと、
林や森の比率も高く、周りは緑でも潤っている。
写真を撮っていても思うのだけれど、
パリとは色の出方がぜんぜん違う。
空気がきれいなのはもちろんのこと、
大気中に水分を含んだ細かい粒子が常に浮遊していて、
それがさらに光を拡散している気がする。
そんなノルマンディーにあるのが、
“モネの庭”として有名なジヴェルニー。
もちろん、ノルマンディーも広いため、
すべての地域が上記のイメージとは限らない。
電車で訪れる人が下車するヴェルノンは、
街中は家が連なり、この印象は薄まるのだけれど、
セーヌ川を渡ってジヴェルニーの方へ向かうと、
途端に“潤いのノルマンディー”へと空気がガラリと変わる。
手前にセーヌ川、背後に小高い山がそびえ、
まさにそこは潤いのある緑の世界。
その中にあるのが“モネの庭”。
ありとあらゆる花を集めたような空間は、
緑を土台にさまざまな色を散りばめた、
色とりどりの世界になっている。
とはいえ、この日はイースターヴァカンス真っ最中、
しかも週末!
大勢の人々がこの限られた空間をぞろぞろ歩くため、
残念ながら、モネの世界にどっぷり浸るまではいかず。
それでも、ノルマンディーの空気の中で、
緑と花に囲まれた睡蓮のある池のきらめきを見たら、
モネの世界をチラリと垣間見れた気がした。
残念ながら、睡蓮の花も咲いていなかったけれど。
この場所で朝から晩まで、
光の変化を描き続けたモネ。
彼の池の上を漂う空気には、空、水、木、花など、
地上にあるすべての色を反射する粒子が、
ゆらりゆらりと漂い、独自の世界を作り出しているみたい。
この“モネの庭”で描かれた睡蓮の連作は、
パリのオランジュリー美術館にあります。
私がオランジュリーにモネの睡蓮を見に行ったのは、
もう3年も前のこと。
自然光が溢れる睡蓮の連作のある部屋は、
モネの希望に基づいて設計されたもの。
巨大なキャンバスに降り注ぐ自然の光は、
表面をやさしく撫でていきながら、
微妙にモネの絵の色を変化させていく。
そのやわらかな色の変化に、
私は自分の心にまで、
自然の光が触れた気がしてハッとした。
それは1日中、光の変化を楽しみながら、
眺めていたい絵だった。
今、ノルマンディーの“モネの庭”に来て思う。
モネの絵は自然との合作なのだ。
絵のモデルを作るように、花で彩られた庭を作ったモネ、
その自分の絵を鑑賞するために、自然光を指定したモネ。
そして彼の絵が醸し出すやさしい印象は、
ノルマンディーの地だからこそ生み出されたのではないかと、
私は勝手に想像してしまうのです。
このノルマンディーの潤いのある空気だからこそ、と。
by yokosakamaki
| 2011-05-26 01:00
| ここもノルマンディー