ノルマンディーの風

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続・ムールの夏!フリットの夏!

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            夕方の満干時間に合わせて、近所の潮干狩り所へ着いてみると、
            細い道は路駐車でいっぱい。
            場所が空くのを待って、バケツを手に続々と帰ってくる人々と話すと、
            どんどん潮が満ちてくるから急いだ方がいいとのこと。

            慌てて海へ向かうと、
            水が引いた海辺は一面を海藻で覆われた緑の世界!

            初秋を思わす高い空に青い海、
            限られた時間のみ外に姿を現した海藻の緑は、
            夕刻の太陽の温かみのある色に照らし出されて、
            さらに深い色合いに見える。

            ノルマンディーの景観で有名な断壁と相まって、
            それはそれは、なんとも幻想的な景色!!


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            断壁から海を眺めたことは何度もあるけれど、
            満干時に海から断壁を眺めたのは初めてのこと。

            うちの近くにこんなに美しい場所があったなんて、知らなかった!!!

            と、興奮する私を横目にせっせとムール貝を獲るFanFan。

            いわゆるあさりの潮干狩りのイメージは砂浜を掘る感じだけれど、
            ノルマンディーのムール貝は岩と岩の間の溝を掘っていく感じ。
            溝の間に残った海水はぬるま湯のような温かさで、
            まだまだ夏らしさを残している。

            貝だけ残っているものも多いけれど、
            泥の中を掘ると、います、います、ムール貝たち。 
            その間を時々横歩きで横切るのは小さな蟹たち。 
            君たちを食べられないのは残念だけれど、
            他にもブーケという小エビが獲れるのだそう。


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            急かされた割には、結局1時間半ほど潮干狩りが楽しめ、
            家に着いたのは19時すぎ。
            しかししかし、
            これから獲ってきたムール貝を洗わなくてはいけません。

            調理は簡単とはいえ、下ごしらえに時間がかかるムール貝。
            ひとつずつ貝から出ているひげを取らなくてはいけないから、
            量が多いと、全部掃除するのに1時間近くかかるのが普通。

            日中が夏並に暑いとはいえ、日が陰ると一気に寒くなるノルマンディー。
            さらに日は短くなって、中庭でムール貝を洗っているうちにとっぷり夜に。


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            水で洗っているため、手は凍えてくるし、
            獲ってきたムール貝の多くが貝が閉じているのに中は泥だけという代物。
            調理中に鍋の中で、ぱっかり口を開けたら泥が出て来たなんてなったら大変!
            貝1つ1つを確認しながら洗っていたから、さらに時間がかかったのです。


            結局2人がかりで掃除してなんと2時間。
            さらに3分の1ほどは、中身は泥だったわけだから、
            自分たちでおいしいものを手に入れようと思ったら、
            ホント、手間も時間もものすごくかかるわけですよ。
          
            用心のため、とりあえず獲ってきたムール貝は一晩塩水の中で寝かすことにし、
            その晩は昨夜の残ったムール貝でパスタにしたのでした(やっぱりムール!)。


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            翌日も恐ろしいほどの快晴で、さらに夏の終わりの危機感が募る。
            再びうちにやってきたアランとFanFanは午後から馬車乗りに出かけてしまい、
            私は家の中でせっせと仕事をしていると、
            夕方になって突然、クリスチャンとフランクが遊びに来た。

            テラスで一緒にビールを飲みながら待っていたけれど、
            FanFanたちがなかなか帰ってこないから、
            クリスチャンの鶴の一声でみんなで探しに行くことに。


            クリスチャンのおんぼろジープで収穫後の小麦畑を右へ左へ、
            土ぼこりをまき散らしながら探し回っていると、
            海辺の断壁の上をのんびりのんびりと馬車に揺られているFanFanたちを発見!
            おんぼろジープを乗り捨て、みんなで馬車の後ろに乗り込む。


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            昨日とは違って断壁から眺める海は、
            ひたりひたりと少しずつ水を満たし続けている。
            夕暮れのオレンジ色の空と相まって、
            その静かな情景は夏の終わりを告げているよう。

            な~んて情緒に浸っているのもわずかな間、
            日が暮れると一気に秋の気温で、みんなでブルブル震えながら、
            クリスチャンたちを家に送り届けて、うちに帰ってきたのは夜の9時。

            「一昨日とまったく同じメニューでごめ~ん」とアランに言いながら、
            男どもにも手伝わせて再び“ムール&フリット”を作る。


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            しか~し同じメニューだといっても、なんといってもムール貝が違う!
            ムール貝は昨日私たちが丹精込めて獲ってきたものですからね、
            何が違うって身の大きさが断然違う!
            貝いっぱいに身が膨らんだムール貝なんて、
            私は初めて食べました。
            
            「自分で獲るムール貝の味には納得だけど、
            2時間かけて洗うのは勘弁だな」と愚痴をこぼすと、
            「洗う面倒をかけないようにきれいな場所で獲るんだ」とアラン。
            えぇぇ、早く言ってくれよ~!!

            初心者の私たちは他の人々がすでに獲り終わった同じ場所を掘っていたけれど、
            ちゃんと通の穴場があるらしい。
            なんにしても次回は大潮の時に行くべし、
            とFanFanとムール貝の潮干狩りへの決意を新たにする。


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            これが今年最後の夏らしい日のこと、
            そしてこの夏のムール&フリットの食べ納めとなったのでした。

            バイバイ、夏の日。
            バイバイ、夏のムール貝。

            また来年、2つ揃ってお会いできることを、
            心から楽しみにしています。
            

            

            
                        
           
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by yokosakamaki | 2013-10-27 05:49 | 夏のこと

ムールの夏!フリットの夏!

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            こんなにもムール貝を食べた夏は初めてでした。
            (といいつつ、写真を撮っている暇がなく、写真は昔レストランで食べたもの)

            日本ではカラス貝などど呼ばれ、いまいち馴染みのない貝ですが、
            フランスでは非常によく食べられるのがこのムール貝(moule)。
            そのポピュラーさ加減といえば、
            日本でいうカレーやラーメンなどに値するほどで、
            いわばフランスの国民食といった感じ。

            パリならベルギーからのチェーン店でいつでも食べられるし、
            海辺の町に行けば、
            外に置かれた黒板に誇らしげに書かれているビストロメニューのひとつ。

            でも、おいしいムール貝を食べようと思ったら、
            おいしい季節を待たなくてはいけません。

            
            ムール貝の旬はだんぜん夏!
            したがって、ムール大好き男のFanFanは、
            いつも夏前になるとそわそわ。
            魚屋でムール貝の出来栄えを聞きに行っては、
            「まだ身が大きくならないって」
            「出来栄えはいまいちみたい」と残念そうに手ぶらで帰ってくる。

            でも、今年は違いました!
            7月中旬にスーパーの魚屋さんで“特価”で売られている、
            “かなりよさげな”ムール貝を買ってきたのを皮切りに、
            その翌日もお客さんが来るっていうんで、
            じゃあ“昨日安くておいしかった”ムール貝を再び買いにスーパーへ。

            残念ながら値段は一晩で2倍も値上がりしていて、
            渋い顔をしながらも今年のムール貝デビューに歯止めがかからず、
            やっぱり大量に買ってきたFanFan。

            ちょっとぐらい高いからって何ですか、
            連日だからって何ですか、
            ムール貝のおいしい季節の到来です!

            それからお客さんがうちに来るたびに、
            この夏のうちのメニューは“ムール&フリット(moules&frites)”。

            フリットといえば、こちらもフランスの国民食である、
            フライドポテトの“ポム・フリット(pommes frites)”のこと。
            フランスではビストロ料理の付け合せには欠かせず、
            何でもかんでもフリットがついてくるのがお決まり。

            でもムール貝といえば、
            “ムール&フリット”しか考えられないくらいの黄金コンビ。

            一度、さやいんげんがうちに大量にあったため、
            捌くべくその日のお客さんたちに“ムール&いんげん(moules&haricots)”を出したら、
            「ムール&アリコは初めて食べたけど、悪くないわね」とは言ってくれたものの、
            みんな何か物足りない顔をしているのは見え見え。

            私自身だって“ムール&アリコ”では何だかしっくりこなくて、
            やっぱり“ムール&フリット”にすればよかったと後悔したもの。


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            何がそんなに合うのかというと、
            ムール貝のソースにフリットをつけて食べる人もいるけれど、
            私はなんといっても歯ごたえの相性だと思うな。
            やわらかいムール貝にカリッと揚がったフリットを合いの手に食べると、
            不思議不思議とバケツ1杯、ムール貝が食べられちゃう(by FanFan)!

            同じポテトだからと、
            ベイクドポテトやマッシュポテトとともにムール貝を想像してみると、
            やわやわコンビでちっとも惹かれない。
            それとも、どこもかしこも“ムール&フリット”一色だから、
            頭に“ムール”とインプットされると“フリット”に変換されるように、
            洗脳されているのかも。

            とにもかくにも、両方とも作るのはものすごく簡単だから、
            料理担当の身としても大助かり。

           
            みじん切りの玉ねぎとつぶしたにんにくをオリーブ油で炒めたら、
            洗ったムール貝を加えてざっくり炒め合わせ、白ワインを振って蓋をし、
            ムール貝の殻が開くまで蒸すだけ(moules marinière)!

            何にでもクリームを入れると言われるノルマンディーでは、
            ソースに生クリームを入れてクリーム風味にするのが一般的ながら、
            私は白ワインだけでさっぱりと仕上げる方が多いな。
            後はお好みでシブレットとかパセリとか香草を入れてもイケル。

            フリットはご存じ、拍子木切りに切ったら揚げ油で揚げるだけ!            

            さすがに8人分ともなると、ムール貝は大鍋で2回戦に挑むしかないけれど、
            ムール貝そのものの味だけで味付けなんて必要ないし、
            なんといってもフランス人の国民食ですから、みんなニッコニコ。
            もう、何人でもお客さん、いらっしゃ~い!!てな感じ。

            でも、私の一番の醍醐味と言ったら、
            翌日に残ったムール貝とソースにパスタを絡めて食べること!
            こちらはノルマンディー風にクリームを入れても、ああうまい!!
            名付けて“ムール貝のボンゴレ・ノルマン”って言うの(伊仏語混合)?

            パスタといったら、
            バターかクリームを絡めることしか知らないノルマン人たちに言うと、
            「へぇ~」と目からウロコみたいな顔をされる。
            ま、ムールといえばフリットしか頭にない人々には、
            かなり上級編ではありますけれどね(おほほほほほ)。
 
            そのためにも、少量のムール貝とソースを残すことは、
            必ず死守しますとも!!



            9月に入っても珍しく夏日が続いていたある日、
            この夏、十ウン回目(?)の“ムール&フリット”のお客様は、
            南仏男のアランでした。
            いつものごとく、1人前バケツ一杯のムール貝を平らげ、
            山盛りのフリットに手を伸ばしながら、
            おしゃべりも休むことのないフランス男2人。

            「このムール貝もおいしいけれど、
            自分で獲ってきたムール貝の味は比べものにならないよ」
            今や南仏男を気取っているけれど、元々はノルマン人であるアランが力説。

            実はフランスでもっともムール貝の生産が多いノルマンディー。
            なんとうちの近くにアサリならぬ、
            ムール貝の潮干狩りができる場所があると言うのです!!!

            
            ちなみにムール貝にも、
            養殖ものと天然ものの2種類があります。

            養殖ものの中でもbouchotと呼ばれるのが、
            砂に打ち込んだ杭で養殖されるやり方で、
            モン・サン・ミシェル湾産が有名。
            身がオレンジがかっていて小粒で、
            ビストロでよく見かけるのがこちら。

            天然ものは身が白っぽくて大きく、
            貝の中に小さな蟹がもれなくオマケでついてくる。
            色の違いは海に潜ったままでなかなか日の光を浴びないため、
            天然ものは色が白いままとのこと。

            いつもFanFanが市場で買ってくるのは天然もので、
            チビ蟹を吐き出しながら食べなくてはいけないのだけれど、
            そのやわらかく肉厚な身はやっぱり美味。
            それよりもうまいという潮干狩りもの、気になるでしょ!


            翌日も恐ろしいほどの快晴で、つかの間の残暑気分。
            でも夏の終わりは確実に秒読みだから、焦る、焦る。
            こうなったら今日行くしかない!
            と、意気揚々、ムール貝の潮干狩りに繰り出したのです。
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by yokosakamaki | 2013-10-15 06:12 | 夏のこと