猫たちの春
朝起きて外に出ると、
冷気で身が引き締まり、吐く息も白い、
3月頭のこと。
この頃の猫たちのお気に入りの場所といえば、
中庭のど真ん中に停めてあったトラクターの運転席。
オンボロでもガラス張りになっているため、
温室状態で暖かいのだろう。
大抵、ミヌー母さんとパシャが交互で、
座席の上に座っているのが家の中から見えた。
でも、その朝は運転席に2匹一緒に並んで座っているのが見える。
これは珍しい!
とカメラを片手にトラクターに近づくと、何だか変だ。
パシャは常に朝からハイテンションな男なので、
私が朝起きるとキッチンの入り口のガラス扉の前に陣取り、
何やらわめいているのがいつもの朝の光景。
でも、私がトラクターに近づいても、
何も言わないばかりか、降りても来ないなんて。
先にミヌー母さんは降りて来たというのに、
独りで固まって、微動だにせず。
ますますおかしい。
うなだれているようでもあり、
よく分からないまま、とりあえずそのままにしておくことに。
猫たちに朝ごはんをあげ、
自分も朝ごはんを食べ終わったけれど、
パシャはトラクターから動く気配をみせない。
さすがに、体の具合が悪いんじゃないかと心配になり、
力ずくでトラクターから降ろすことにした。
パシャの大きな体を抱えると、抵抗はしないのだけれど、
何かを訴えるかのように鳴き止まない。
そのまま家のサロンの中の彼の場所に運んでいくと、
うずくまったまま、じっとしている様子。
朝ごはんも食べていないし、
一体どうしたのかと気になりながらも、そばで仕事を開始。
午後になって、ふと起き上ったかと思うと、
後ろ足をかばうようにひょっこひょっこ歩いている。
やっぱり怪我したんだ!と思い、
パシャの足を点検してみたけれど、外傷はなし。
夕方になって、再び起きたパシャは、
ゆっくりながらほぼ普通に歩けるようになり、
小さな声でごはんを請求するまでに復活。
結局、体には問題ないようだけれど、
パシャに一体何が起こったというのか。
思いつくことと言えば、
最近やたらと中庭に出没するようになった大きな黒猫のこと。
家まではやって来ないのだけれど、
向かいの納屋の前をウロウロする姿をよく見かける。
パシャとにらみ合っている姿を見たこともあるし、
暗くなってから猫が喧嘩する声が聞こえたことも。
もしや、あいつがパシャの意気消沈の原因か!
念のために、ネットで検索してみると、
縄張り争いで負けた猫は後ろ足を怪我するらしい。
そうか、負けちゃったんだね。。。
と思うと、朝からのパシャの様子が可笑しくて仕方がない。
いや、猫だって落ち込むことはあるでしょうし、
それを笑ってはいけないけれど、
何といってもあの強気なパシャが、
朝ごはんも喉に通らないほどのダメージを受けるとは!!
さらに、ミヌー母さんの傍にいて慰めてもらっていたかと思うと、
それはもうすぐ3歳にもなる大の男のやることなのか?
いやいや、やっぱりパシャらしい(笑)。
逆に腹が立って来るのが、あの黒猫。
聞くところによると、畑向こうにある家の新しい賃借人の猫だそう。
自分の家の縄張りで負けてしまうパシャもパシャだけれど、
他所の家に入って来て、喧嘩を仕掛ける黒猫はどうなのよ!
喧嘩に負けようが、何しようが、パシャはうちの猫ですからね。
勝手にうちを縄張りにしないでよ!!
その後も何度か黒猫の姿は見かけたけれど、
それ以上の喧嘩には至らなかったよう。
でもこの春、うちにやって来た猫は、
黒猫だけではなかったのです。
by yokosakamaki
| 2014-11-09 07:19
| うちの猫物語