馬に乗ってお買い物
ようやく天気もよくなってきたし、
久しぶりのお馬さんの出番です。
乗るのはもちろん、のんびり歩行のうちの老馬たち、
イスパノとヴィオレットのお二方。
では、はりきって、
のんびりと行ってみましょう!
暖かくなってきたとはいえ、
まだまだ凍えるような冷たい風が海から吹いてくる3月末。
防寒用の足まで隠れる長いコートをしっかり着用しての乗馬です。
野原は青々とした柔らかそうな草で覆われているけれど、
多くの木々はまだ黒々とした裸のまま。
パリではすでに、木々はうっすらと緑のヴェールをまとい、
さくらんぼの花も満開になりつつあるというのに、
うちのさくらんぼの木もようやく蕾が膨らみ始めたくらい。
やっぱり、パリとノルマンディーとは季節に時差があるのですね。
冬と春が混ざり合ったような、
冷たい風と暖かな陽気を交互に感じながら、
ぽっくり、ぽっくり、足を進める。
その先にあるのは、
これまたお久しぶりね♪の近所の海。
霞がかっていますが、
あの地の果てに海があるのが見えるでしょうか?
と、突如ワープして着いた近所の海には、
広い砂浜の上に細長いテーブルのようなものがずらり。
上に載っている網の中には牡蠣がゴロゴロ入っています。
実はノルマンディー地方は、
ブルターニュ地方、ポワトゥ・シャラント地方と並んで、
フランスで牡蠣(huître)の3大産地のひとつ。
モン・サン・ミッシェルで知られるように、
潮の干満差が大きいノルマンディー地方の海岸は、
牡蠣の養殖に適しているというわけなのです。
満ち潮の時はすっかり隠れてしまう牡蠣テーブルも、
引き潮の時はすっかり姿を現し、
すぐそばまで馬に乗って近づくことが可能。
でもよくよく見てみると、
牡蠣が載っていない空のテーブルもチラホラ見えますよ。
実は数年前から牡蠣の全滅が危ぶまれているフランス。
牡蠣の赤ちゃんである稚貝の約80%が死んでしまうという状況が続いているのです。
原因は新型ウィルスとのことながら、対処法は未だに発見されておらず。
値段が少々高くなっていつつも、今はまだ普通に買うことができるけれど、
数年後、フランスから牡蠣がいなくなってしまうということもあり得るわけです。
1960年代にも同じように病気で絶滅してしまったフランスの牡蠣。
現在出回っている牡蠣は宮城県から取り寄せた日本種の牡蠣なのです。
ブルターニュ地方の牡蠣の養殖屋さん、フィリップが言っていたけれど、
今回も日本に牡蠣の救済を求めたというフランス。
さまざまな手続きを踏み、
いざ、宮城県からフランスへ、再び種牡蠣を送ろうとしていたところ、
起きたのが、かの東日本大震災。
自分のところの牡蠣が壊滅状態になってしまったため、
そのまま話はストップしてしまったのだそう。
逆に牡蠣の養殖復興を助けるため、
フランスから日本に支援物資が送られたのだとか。
そう、自然の恵みは地球全体の財産なのですね。
自分ちの国の自然、他所んちの国の自然と区別することは無理で、
私たちは地球という球上でつながった自然を共有している。
だからこそ、あなたの国の問題はあなたのもの、
私の国の問題は私のもの、なんて他人事では済まされない。
東北の牡蠣、フランスの牡蠣が、
ともに仲良く復活してくれることを祈るばかりです。
そんな2国の牡蠣に思いを馳せていると、
無性に牡蠣が食べたくなってきました。
そこですぐそばにある、牡蠣養殖屋さんの仕分け倉庫へ。
いろんな牡蠣屋さんの倉庫が並んだエリアなのですが、
一般人でも少量を買うことができます。
まさに産地直売!
といっても馬で乗りつけてくる人は少ないでしょうが。
牡蠣を2kg買ったら、そのまま家へ一直線。
今年初のテラスご飯は、生牡蠣と白ワインのご馳走です!
うちでは生牡蠣はシンプルにレモンをかけて食べるのがお決まり。
でも、うちに来るたびに、ノルマンディーの牡蠣をたらふく食べて、
プロヴァンス地方に帰るアランが、
「絶対、生牡蠣にはビネガーソースじゃないとヤダ」と抜かすので、
生牡蠣用エシャロット入りビネガーソース(vinaigre à l'échalote)を作ったら、
あら、やっぱりおいしいのね。
作り方はみじん切りのエシャロットに、
赤ワインビネガーをたっぷり注いでこしょうを少々振り、
しばらく漬けておくだけ。
食べる時に牡蠣の上にこのビネガーソースをたらし、
つるりと口に流し込むと、
生牡蠣のとろりとしたミルク感にエシャロットの辛味が絶妙なアクセント。
さらにフランスでは、ここにバターを塗ったパンを、
合いの手として食べるのが基本。
さっぱりしすぎる牡蠣の味にバターのコクがプラスされ、
食べて納得の組み合わせ。
この2大必須コンビが、
フランス人の生牡蠣の大量消費を促す名脇役というわけ。
でも、私としてはFanFanの食べる3分の1量の生牡蠣で、
十分に大満足ですけれどね。
春の暖かな日差しを浴びながら、
昼から白ワインとともに食べる生牡蠣。
あぁ~、これぞ至福の時間です。
by yokosakamaki
| 2012-04-07 23:46
| 春のこと