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ノルマンディーの風

猫家族の危機

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            その週は、必死に書かないと終わらない原稿書きがあったので、
            私は1人、ノルマンディーの家に残って、
            うちの動物たちと留守番をしていた。

            朝、いつも通りに子猫3匹をサロンの中に入れてから、
            犬のアカントを檻の外に出してあげる。
            まだまだ寒い日が続いていた2月中旬ながら、
            その日は春が近いことを感じさせるような、
            柔らかな光が差す暖かな陽気。

            こんな日に家に篭って原稿書きをしないといけないことを恨みながら、
            サロンに戻ると、なぜかプリュムがクロクロの上に乗っている。

            ねぇ、プッチン・プリュム。
            あんた、妹を踏んづけているよ。

            妹を踏んづけて平気な顔をしている兄も兄なら、
            巨体の兄に乗っかられてそのまま寝ている妹も妹。

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            ま、いいんですけど、
            と仕事を始めるべく隣の椅子に座ると、
            すかさずクロクロの上から私の膝の上に鞍替えしてくるプリュム。
            まさか、私の膝と間違えていたわけじゃないよね。

            ゴ~ン、ゴ~ンとドラを叩くような音で喉を鳴らすプリュムを、
            いつも通りにグリグリ撫で回して愛をたっぷりあげる。
            ようやくプリュムが落ち着いたところで、
            さて、と仕事を始めようとして、
            あれ、と気がついた。

            そういえば、最近ミヌー母さんの姿を見ていない気がする。

            うちのミヌー母さんは完全に自由猫なので、
            子猫たちのように常に中庭にいるというわけではなく、
            牧草地の向こうにあるFanFanの実家でも目撃証言があるように、
            その行動範囲は計り知れない。

            ご飯だけを食べに来たと思ったら、すぐにいそいそと出て行くこともザラで、
            何やら急いだその姿は、「ああ忙しい、忙しい」とつぶやいているようでも。
            もしかして、カルチャースクールにでも通っているのかしら?

            だから姿が見えなくても、子猫とは違って大騒ぎすることはないのだけれど、
            それにしても数日間、姿を現さないのはおかしい。
            最後に見たのがいつだったのか思い出そうとしても、
            気にして見ているわけではないから、なかなか思い出せない。
            昨日は見ていないし、一昨日も見ていない気がする。

            そんなことを気にし出すと止まらなくなるもので、
            早くミヌーの姿が見えないものか、窓の外を気にしつつ仕事を進めた。
            私の仕事する場所から見える位置にみんなのご飯が置いてあるため、
            ミヌーが帰ってきたら見逃すはずはない。

            しかし、その日もミヌーの姿は見えず。
            夕方にみんなにご飯をあげるため、
            子猫たちを外に出し、ミヌーを呼んだ。

            ミヌー!ミヌー!

            やっぱりミヌーは帰って来ない。

            と、その時になって初めて、
            他の事件が勃発していることに気がついたのです。

            いつもなら夕方になると、
            朝からず~っと昼寝をしていた子猫たちもさすがに起き出して動き始めるため、
            その時にみんなをサロンの外に出すのが日課。
            特に落ち着きのないパシャは、まだ他の猫が寝ていても、
            いち早く、独りわめきながら部屋の中を動き始める。

            まだ寝ている子猫がいたとしても、
            ご飯をあげればみんな一斉に外に出てくるのがお決まり。

            それなのにこの日はご飯をあげると、
            ダッシュで駆け寄って来たのはプリュムとクロクロだけ。
            あの我先にやって来るはずのパシャは、
            まだサロンの中のクッションに横たわったまま。

            そいつはおかしい。

            「パシャ、ご飯だよ」と呼んでも、
            顔はこちらへ向けるのにまったく動き出す気配がない。

            ますます、おかしい。

            サロンに戻り、頭を撫でてあげると、
            あれ、パシャ。泣いているの?

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            訳が分からないまま、サロンの扉を閉め、
            クッションの上で動かないパシャを眺めながら、
            とりあえず今日一日のパシャのことを思い出してみる。

            朝起きて、寝室の窓から外を見たら、
            ご飯の傍に座っているパシャを見つけたんだっけ。
            だから、朝ご飯は食べたはず。
            その後、サロンに入れてあげると、
            私の膝の上にも来ず、駄々もこねずにクッションの上に乗った気がする。

            そうだ、そうだ。
            あのわがままパシャもだいぶ落ち着いてきたものだ、
            と思っていたんだもの。
            そんな静かなパシャだったから、
            朝、ちょっかいを出したのはめずらしくプリュムの方だった。

            それからは、クッションの上からぜんぜん動いていない。
            そういえば、今日は鳴き声もまったく聞いていない気がする。

            サロンの中で再び、パシャにだけご飯をあげる。
            それでもやっぱり食べない。

            慌ててFanFanに電話すると、
            「お腹に虫がいるかもしれないから、虫下しを飲ますように」との仰せ。
            「ミヌーも帰って来ないけれど、最後に見たのはいつだったか覚えている?」と聞くと、
            「3日前には絶対見た」とのこと。

            電話を切って早速、パシャに薬を飲ませる。
            ネットで“猫 食欲がない”と検索してみたけれど、
            いろんな原因があるようでさっぱり分からない。

            とりあえず、私も夕飯にしようと、キッチンで支度をしていると、
            パシャが弱々しく鳴きながら、ヨロヨロとやって来た。

            「ご飯が食べたいの?ご飯ならサロンにあるよ」

            サロンに連れて戻って食べ物を見せてもやはり食べず。
            と、突然、私の目の前で体を縮込ませたと思うと、
            何やら吐き出した。

            嘔吐物はほとんどなく、黄色っぽい透明な液体の中に、
            何かの黒い羽が1本と細い白い紐みたいのが2本。
            その白い紐は動いているようでもありながら、
            透明な弦のようにも見える。
            変なものでも食べたのか?と思いながら、
            後でFanFanに見せるためにヨーグルトの空き瓶に採集。

            その後もご飯は食べず、パシャはクッションの上に戻って動かない。

            夕食後、再びネットで検索していると、
            「猫は48時間以上物を食べないと大変なことになる」なんて話も発見!
            FanFanは明日の夜まで帰って来ないし、
            明日は日曜日だから獣医さんもやっていない。
            この状態が明日も続いたらどうしよう!!

            嫌がるパシャに缶詰のペットフードの上澄みを、
            スプーンですくって無理やり食べさせる。
            スプーン2杯分を何とか食べさせ、
            そのままクッションの上にそっとしておいた。
            
            そしてミヌーは、やっぱり夜も姿を見せなかったのです。

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by yokosakamaki | 2012-03-27 00:25 | うちの猫物語